第一章 着任申告のこと
昭和十八年十四日、藤山虎也君、兼沢勉君ら福山の連隊―久留米の予備士官学校同期生の兵科見習士官八名と補充隊員一行が汗びっしょりでラクネに追及した。それぞれ各隊に配属され、われわれ将校の卵は上官に着任の申告をすべく待機していた。やがて立派なヒゲの少佐殿がのしのしと近づいてこられる。陸士四十四期戸伏第一大隊長(のち夏兵団参謀)である。
「○○見習士官。(中略)以上○名ただいま着任いたしました。ここに謹んで申告いたします。敬礼!」と型どおりの申告が終わった
!「よーし。ご苦労。(中略)ところで貴様達は大学高専出だろうが、小便をしたい!と英語で言えるか!!アイ、ウォント・・・などとは言わんぞ!誰か言ってみろ!(後略)」酷暑のうえに質問攻撃。目がくらんだ。むろん誰もが黙して応えず。今様にいえばユニークさのある訓辞だったが、威厳に圧倒されたものだ。ついに正解を知る由もなく今日に至ってしまったが、日米の雌雄を決せんとするラバウルの戦場へ着任早々のこの奇襲訓辞が私のニューブリテン島でのスタートであり、以後ツルブ、ブッシングの警備、マーカス岬の戦闘、「か号」転進作戦と生命を共にしてきた戸伏大隊長とのなれそめでもあった。