「高部眞一少佐の回想」


 高部大隊長の回想を続けます。
この日の天候は午後から雨になり数日間豪雨が続き壕という壕は水浸しになっていた。

 当時は対米戦闘の様相がどのようなものか知らず、これまでに支那戦場で敵を撃破して来たのと同じ調子であった。 命令下達を傍らで聞いていたほかの部隊の兵が驚くほど、勇壮で自信に満ちたものであった。
続いて攻撃前進を開始したが、ジャングルであるから、各中隊とも一列縦隊とならざるを得ない。第一中隊後尾が見えなくなったところ、 激しい銃撃が聞こえてきた。ついて、暫くすると負傷兵が後送してき始めたが、攻撃進捗の模様はなかった。
日没を迎えたが、そのまま攻撃を続行した。翌二十七日も攻撃を敢行し、昼ごろから予備隊も投入した。 しかし、このころになると大隊の戦力は半減してしまった。行け!行け!といって攻撃前進すると、負傷続出で帰ってくるという有様であった。 そしてその後の戦況は膠着した。

 この間、我に最も損害を与えたのは敵の迫撃砲であった。ジャングルにさえぎられて全く敵の詩型を見ない戦闘であった。 林空を見つけて聯隊砲に音測による盲目射撃をやらせたが、敵は発射音を目当てにその後2〜3時間の間猛烈に火力を集中してきた。 迫撃砲にも射撃させた。勿論盲目射撃で効果はわからなかったが、一発撃つと穴の中に入るようにして携行弾薬は全部撃った。 速射砲は近くに現出した敵の機関砲を射撃させたが、この隊は前進していくと至近距離から射撃を受け、小隊長が「突っ込め!」と号令したが 、敵兵の位置に達するまでに全員戦死した。第八中隊の一個小隊も喚声を挙げて敵に突撃した。この時の攻撃では敵兵が驚いて退却した。 敵と対峙し戦闘しつつ越年したが、一月三日頃には第七中隊と機関銃中隊は殆どが全滅し第八中隊の如きも、いたというだけで連絡も出来ない状態になってしまっていた。

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