DIARY OF WAR


 Diary No.32「戦場の生物達」

 日米交戦中のあの凄まじい銃爆撃、爆音の時、ジャングルに
生息していた生き物たちは、さぞかしぶったまげたことでしょうね。
爆死したものもさぞ多かったことと思いますよ。
ニューギニアあたりには、アフリカほどの猛獣はいませんでしたから
警備中も戦闘中もさしたる心配はありませんでした。

ここで、めぐり合った「生き物たち」の話題をいくつか・・・。

さそり
警備中の宿舎は、天井なしの簡易建築で、屋根も床も椰子の葉で葺いた。
ある時屋根裏に異様な虫を発見。蠍(さそり)が数匹這っている。
一同びっくり仰天。「即時殺害」で収まったが、まさか「さそり」が・・・とは。

鶏とニシキ蛇
「戦陣の断章」にも書いたが・・。
蛋白質補給のため各部隊ごとに鶏を飼育していた。
野生化しているため、飛んでしまわないように高い柵でかこっていた。
ある夜、鶏小屋が騒がしいので、懐中電灯で照らしてみると
なんと腕ぐらいの太さのニシキ蛇に1羽がからまれているではないか!!
早速蛇を銃で撃ち殺し、輪切りにして焼き、一同で蛋白質補給の一助にした。

ナマズか?
兵一名を連れて斥候に出た。斜面を横に流れる細い川をみると、約30センチぐらいで
太さがどこも同じくらいの生物が横たわっていた。帰路蔦で縛り上げて持ち帰り、
みんなで食べた。味は淡白で特に美味くはなかった。

ワニ
ブッシングで警備中に時々イトネ河に沿って敵機が超低空で襲ってくる。
ある日、兵が警備中にワニを発見。銃で頭部を打ち抜き殺害に成功した。
むやみに銃弾を消費してはならないが、飢えている一同のためお許しとなり
久しぶりにワニで腹を肥やした。

アリ塚
割合開けたところに大きなカルメ状のアリ塚が沢山ある。これを崩すと、いるわいるわ
白アリが無数に出てくる。飼育中の鶏に与えるときれいに啄ばみ、餌には苦労しないで済んだ。  


これも拙著「戦陣の断章」に書いたが、夜になるとマンゴー木に何万匹の蛍が一斉に点滅する
光景に何回か出会った。まさに南国のネオンサインである。蛍の集団見合いらしい。
20年前にニューギニア、ラバウル方面を訪れた時には、残念ながら遭遇しなかった。

唐辛子と極楽鳥
土人の屋敷には概ね唐辛子が植えてある。門の脇から几帳面に綺麗に並べている。
香辛料に飢えていたわれわれには魅力があり、よく赤くなった実を失敬したものだ。
とうもろこし畑には、実を食べにいろいろな鳥がやってくる。
ある日偶然、私はとうもろこし畑に極楽鳥が止まっている姿を見かけた。足が震えた。
まさにこの世の鳥とは思えない優雅さである。銃がなかったのが惜しまれた。

マングローブとラワンと蔓
いずれも前著に書いた。マングローブの種類は多いが、
われわれが、オモイに上陸してから第一線に追急するまでの
道のりはまさにマングローブとの戦いでもあった。
手を広げ第二間接を曲げた上体に根を張ったその上を歩き、
夜は木に寄りかかって寝たのである。
多くのマングローブは根が三角状になっているが、
この種類だったら根の上を歩くことは出来ずマーカス岬への追及は不可能であったと思う。
ラワンの大木にも随分お目にかかった。
夜、大きく張った根と根の間で大隊長に寝ながら「フランス国家」を教わったのもいい思い出である。
転進中に3日ほど山に入り込み、水筒の水が切れたため、上から垂れている蔦を切り、
落ちてくる水を飲んで喉をいやしたこともあった。

熱帯魚
転進中、大きな河に何回も遭遇したが、川べりあたりには、
どの河にもグッピーとかエンゼルフィツシュが悠然と泳いでいた。まさに南国の楽園である。

コウモリ
普通日本で見るコウモリは洞窟の中で生息するが、
パプアニューギニアのマダンでは大きな木の枝枝にぶらさがっているコウモリの群れを見かけた。


「生き物」ではないが、既述のように赤道付近には珊瑚礁が多いため、
波は遠い珊瑚礁付近でザーザーとやっており、海岸にはポチャポチャ程度のサザナミしかない。
これも日本内地では見られない風景である。

以上、警備乃至戦闘中に見られた南の国のあれやこれやであるが、

戦場はいつでもドンドンパチパチではない。

周りには常に心温まる自然がある。

このような南国の平和を乱した両軍の罪も大きいかも・・・

Diary No.033「地獄道」
 

 

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