DIARY OF WAR


 Diary No.28「殊勲甲」

 軍人は、将兵を問わず各人「軍隊手牒」を所有している。
ここには当人の軍歴がこと細かに記入されている。
この仕事は通常、中隊付きの准尉が行っている。しかし長い戦場経験で失うことがあるが、
中隊には記録がちゃんと残っているから心配はご無用。
駐留中に准尉が記事を記載して各人に保管させる。いわば各人の軍隊履歴書である。

 戦闘で殊勲を立てれば、殊勲甲とか殊勲乙とかが記載され
いずれ内地に帰還した暁には該当の「金鵄勲章」が授与される。

「カ号作戦に基づく転進」を無事達成し、トーマ地区に集結して暫くして連隊の功績調査が行われた。
功績の決定は、下士官、兵は中隊長が、大隊内の将校は、大隊長が、
大隊長クラスは、連隊長が評価をつけるのが通例である。
たまたま中隊長でも大隊本部の下士官・兵のことは不明らしく私にも手伝いを頼んでこられた。

 しかしそれぞれの戦闘で、誰が特段の功績を建てたかを決めることは困難であった。
しかも「勲X等金鵄勲章」ということになれば乱発は出来ない。
なんとか話し合いで結論を出し得たが、なんとも後味は悪かった。
この結果は、前記の手牒に記載されることになるが、
勿論勲章の交付は、いずれ内地に帰ってからのことである。

 連隊内の全貌は判り得ないが、マーカス岬の戦場で「殊勲甲」の対象になったのは、
戸伏大隊長、3中隊長、塚本大隊副官、石原曹長、野々村兵長の7名であった。
このほか「殊勲乙」が数名いたことは当然である。
野々村兵長は、特別の功労があったため直ちに2階級昇進し「軍曹」に抜擢された(既報)。

私の「軍隊手牒」は、マーカス岬逆上陸に出発直前に、
私物入りの柳行李に入れて地中に埋めたため既に無くなってしまった。
功績調査の結果は、勿論マル秘扱いであるから、担当者以外は知らない。
「殊勲甲」であろうと、敗戦の憂き目に会っては、一時の夢物語に終わってしまったが、
祖国のために身命を投げ出して渡り合った結果の褒章であり、
以って瞑すべきだと今でも思っている次第。

 

Diary No.029「方面軍予備隊」
 

 

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