Diary No.23「真野閣下の軍刀」
私が、ニューブリテン島のツルブに駐在中、短期間ではあったが、 図らずも兵団長真野五郎中将閣下の専属副官を仰せつかった。 このことについては、拙著「戦陣の断章」第7章に記載した。 将校が軍刀を保持していたことは万人承知であるが、その種類については案外知られていない。 由緒ある名刀から昭和刀(当時私のはこれに属する)に至るまで数限りなくあったと思う。 たまたま上記の職を拝し、勤務中に閣下の軍刀を拝眉する機会を得た。 閣下の軍刀は反りのある両刃という珍しいものであった。 当時はうかつにも「銘」を聞きそこなったが、後日談で「正宗」と言う事が判かったのである。 終戦時、ラバウル地区には豪州軍が進駐し、軍刀,眼鏡、拳銃だけは別々の洞窟に集積させた。 私が、軍刀の洞窟見張り担当を命じられたことは、上記の著書にも記載したが、 軍刀の中でも由緒あるものは予め別に保管させておいたらしい。 終戦後、豪州にある戦争記念館に展示してある品のうち旧日本軍人の軍刀9本が福岡市の 刀剣研磨師「梶原福松さん」宅に研ぎ直しの依頼が届いた。 その内の1本が真野閣下の軍刀である事が判明したのである。 (当時生存されていた奥様をはじめ遺族の方々が面会して確認したそうである。) 研磨終了後、返還を要求したが、残念ながら聞き入れられることなくまた豪州に戻って行ってしまった 私の所持していた大量生産の「昭和刀」などは、購入時には刃はよく研いでなく、出征する時に あらためて更によく研ぐという代物であった。 私は、かつて、あの由緒ある「正宗」を手にしたことがあったということを 今振り返るだけで背筋がゾクゾクとする思いがある。
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