DIARY OF WAR


 Diary No.19「めぐり合い〜半年振りの邂逅」

 海岸から山に入り、3日間は樹木から垂れ下がった蔦を切り、
ポタポタと落ちてくる樹液を啜りながらなんとか飢えをしのいできた。
固形物が久しく入っていないため足はふらつき、蔦を切るときの力も おぼつかない。
ようやくジャングルを抜けると、ようやく周辺が開け、地図を頼りに 北進し始めた。
部隊は長々と隊列が伸び、休憩を命じても後方まで徹底しない。
出発の合図の頃、ようやく後方の兵が辿り着くありさまである。
 
 地図上で「トリウ」という地名を見つけ、そこまで行けばなんとか
どこかの部隊に遭遇するであろうと戸伏大隊長と二人の副官とで 結論づけた。
しかし未だ3キロぐらいはあろう。
後方の一同にも「もう近いぞ!!頑張れ!!」と連絡させ、 更に気力を振り絞って歩きだした。
明るい展望に一同気を取り直したことは言うまでもない。
果たせるかなわれわれの判断に誤りがなかった。
通りがかりの土人に行き会ったので「トリウ」を聞くと直ぐそこだとのこと。
一同元気を取り戻した。

 しばらく歩くと爆音。「それ遮蔽しろ!!」と草むらの陰に避難する。
よし!「出発!!」。
すると、向こうから日本の(^^)三人の兵が走ってきた。

「ご苦労さまでした!!」

見るとわが一中隊にいたT兵長、S上等兵、M上等兵ではないか・・・。

 彼らは、わけあって他部隊に転属した連中で、われわれが西部から
歩いて下がってきてトリウを通過するとの情報を聞いたらしく、勇んで出迎えに来たのだと言う。

「やあー暫くだったなー!!」とおのおのに抱きついて喜び合った。

「ご苦労様でした。大変じゃったですのう!!」と広島弁が飛び出した。

「もうトーマ(われわれの最終地)はすぐそこです。頑張ってください」

「有難う!!ご苦労!!」と大隊長は3人をねぎらった。

髭茫々、衣服はぼろぼろの姿に3人ともそれ以上の言葉が出なかったようだ。

 かくして転進の大任を果たし、
一足早く大発動艇で戻っていた兵団長に帰還の挨拶を済ませ、
各部隊に与えられていた宿営予定地に分散配備したのである。
バルチン山一帯に配備されたわが夏兵団はその後方面軍の予備隊となり、
敵上陸に備えての猛訓練に入るのである。

 
Diary No.020「大隊長の髭」
 

 

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