DIARY OF WAR


 Diary No.9「昭和17年10月」

 卒業も近づいたある日。総仕上げとして1・2・3・機関銃・野砲各中隊合同訓練が行われた。
高良台演習場で朝から夕方まで小隊教練、中隊教練に明け暮れ,ようやく帰校の途についた。
各中隊とも疲れを吹き飛ばそうと軍歌を歌い,30キロの装具もものかわカラ元気を出して歌った。
ようやく見慣れた道を過ぎた頃校門が見えてきた。

 やれやれと思ったが、校門に着くや中隊ごとに「中隊舎前まで匍匐前進!」の命令。
一同「ごそごそ」と匍匐を始めた。銃を片手に疲かれきった体を前へ進める。
約150メートルの匍匐。泥まみれの衣服が更に砂まみれになった。
区隊長は走って先に行っていた。
中隊舎前に着くや「10分後に防具を着けて整列!!」の声。
今度は銃剣術である。 一同大忙しで衣服を脱ぎ、胴をつけ面を被り中隊舎前に整列をした。
もうクタクタである。「やー!」「突け!」「やー!」「突け!」
約30分も突き合った頃「よーし止め!!」の号令。
「気を付け!これで今日の演習は終了!解散!」

 一同クタクタで寝室に戻った。これから夕食まで間に兵器の手入れと衣服の洗濯である。
銃の「ショウビハン」(土につけるところ)のネジについた土まで綺麗に拭い取る。

 衣服に着いた赤土は頑固である。 
将校生徒たるもの口に出して愚痴など言えないのだ。
ようやく夜の点呼が済み自習。反省録に今日の感想を書いてようやく就寝となる。
消灯ラッパを聞きながらぐっすりと眠りに入った。

 卒業間近か。一人ひとり区隊長との面談が行われた。
「雨の中泥だらけで小隊長をやったな!。よくやったぞ!
貴様のお父さんは私と同じ少尉候補者出身の中尉だったなー」
「近衛連隊出身とはたいしたもんだ!」と。 父のことまでみんな学校にまで来ているのには驚いた。

「卒業し、また原隊に復帰するが、帰隊してからは見習士官としてしっかりやれよ!」と励まされた。
思わずポロポロと涙がこぼれた。「よーし 終わり!」と言われて寝室に戻った。

 10月30日校長閣下から卒業証書が授与され、
晴れて見習士官になり上から下まで新品の衣服が支給され軍刀を下げた。
翌日、幹部候補生第7期の見習士官は、福山、佐賀、和歌山、小倉とそれぞれ原隊に復帰していった。


 

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