DIARY OF WAR


 Diary No.8「演習場」

 週に概ね3回は高良台演習場に演習に出かける。
約3キロの装具(背嚢、弾入れ、帯剣など)を身につけ、銃を担いでのイデタチである。
校門を出るや週番候補生が「軍歌演習!!血潮と交えし!!いち、にーさんー」と号令をかける。
「血潮と交えし遼東に、さまよう魂の叫び聞け・・・」と歩調に合わせて合唱を開始。

 自ずと気が引き締まる。

 演習場に着くや、区隊長から「本日は擲弾筒を主力とした小隊の攻撃訓練を行う!」との指示。
区隊の班ごとに分隊と決めて訓練に入った。
広い演習場を分隊長の号令により「進め!」「止まれ!」「撃て!」と、走り回った。

 擲弾筒は結構重い。

私に番が回ってきた。隣の候補生と銃と交換して、擲弾筒の操作を担当した。

 冷たい筒を握り締め走った。「撃て!!」 ズドーン!!! 。
数メートル走ってからひょいと見ると、引き金取り付けの輪がとれて引き金が外れてしまっていた。
さあ大変。直径1センチほどの針金の輪がどこかに紛失してしまっている。
これでは引き金の用をなさない。
これからが大騒ぎ。天皇陛下から戴いた兵器である。
区隊長以下全員で探し始めた。私は泣きそうになった。
地面の上を這いずり周り、草の中、赤土の上をガサガサ探した。

「あったぞー」と候補生の声。フーツと力が抜けた。
「全員集合!!」「演習終了!帰校!!」  へなへなとなった。

 みんな有難う!涙がこぼれた。

これが全体責任なのだ。誰にも起こりうる事態であり個人の責任は問わない。
帰校後、みんなにお礼を言った。
「誰がポカをやるか分からんよ。気にするな」と慰められた。


 

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