DIARY OF WAR


 Diary No,2 「副官勤務」

 私は幸い高等司令部(師団司令部など)に短い期間でしたが
勤務(専属副官ーいわば中将閣下の高級当番)した経験がありましたので、
兵隊さんは勿論、中隊長クラスでもあまり知らないことを経験しました。
つまり・・大きな組織しかもジャングル地帯に広く配備された
数多くの連隊を意のままに動かすには、当然「命令」をくださなければなりません。
一般には「すすめー」とか「右へ行けー」ぐらいにしか考えていないのではないでしょうか。
戦中の女性、兵隊さんでも知らないと思います。
「命令」は謄写版刷りの文章でやります。
作戦命令でしたら作戦参謀が起案します。閣下が赤鉛筆で自分の意図で朱を入れ、
私が清書して隷下部隊数だけ印刷して高級副官が部隊の命令受領者を集めて交付します。
これで初めて各部隊が動き出すのです。

この間せいぜい30分

 いかに軍隊の行動が迅速であるか分かるでしょう。
軍隊が常に迅速正確をモットーに訓練されているかが分かるでしょう。
戦場には謄写版や歯科の治療台その他内地での生活が出来ると同じものが
外地の戦場にもなんでも運んでいるのです。
もっとも毎日の敵の爆撃で相当吹っ飛んでいますが・・・。  
参謀にも分担があり後方参謀,兵器参謀・・と上になるほど分化します。
方面軍司令部などは第1課、第2課に分かれていてそれぞれ課長がいるのです。
大体閣下なる方は陸軍大学校をでていて、
在校中に命令などをいかに簡潔明瞭にするかの教育を受けています。
参謀も同様ですが、その起案文にまた朱をいれて要点を漏らさず簡潔に直す
頭脳には感心した次第です。
上には上がいるものだと脱帽しました。閣下は皆参謀を経験します。
名参謀が名閣下になるのでしょう。今村大将は陸大をトップで卒業、
恩賜の軍刀組です。そのような方を最高司令官に頂いたわれわれは幸福でした。


 

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