マーカス岬のわが陣地の周辺は、毎日のようにB25やB24の爆撃とピレロ島からの砲撃、敵陣地からの迫撃砲と常に危険にさらされていた。メッセリア飛行場奪取が目的でもあり飛行場あたりを狙う砲弾が常に頭の上をヒュルヒュルと不気味な音を立てて飛んで行き、しばらくして後方でドカドカとものすごい音を立てて炸裂した。
夜は夜で不寝番射撃と名づけたが、三連発の迫撃砲で一晩中悩ませる。だんだん慣れてくると敵の発射音の大きさで着弾の位置が予測される。ポンポンポンと音がしても、まだこれなら大丈夫。ポンポンポン「こりゃ近い」というので壕にもぐり込むという始末。
ある日、ジャングルの上に「ブルブルブル」とけたたましい爆音がして、われわれの陣地の上で一時停止したかと思うと三六〇度転回して又ブルブルと帰っていった。飛行機にしては、こういう芸当はできない。いかんせん昼なお暗いジャングルでは姿も見えないのである。撃てば届く射程距離に止まっているのに撃てないじれったさ。やがてドドドーンという音が遠くでしたかと思うと、数秒後にドカドカと至近弾が落ちてきた。距離測定を空からやるとは憎いものだ。
当時は今のように進歩したヘリコプターではなかったであろうが、敵偵察にオートジャイロを使うとは舐められたものである。