ブッシングあたりの南海岸は湿地帯がずっと続いており、しかも波打際近くには無数の黒誚が腕組みをしているように不気味なマングローブが張っている。ちょうど手の平を下にして指先を曲げた形のこの部分は植物学上では幹なのか、根なのか知らないが実に固い。網の目のようなマングローブの下には油の浮いたような水がどんよりと淀んでいる。素足でもつけようものなら直ぐに皮膚病になりそうである。
われわれ将兵は移動のたびにどれほど悩まされたか知れない。この上を渡ることは当然行動を鈍らせ、軍靴の底の破損を早める。ある者はすき間に足をすべらせ捻挫した。
遥かマーカス岬方面がさわがしくなってきた。